だが実は,元の信号に割と現実的な制約条件を考えてやることで,その常識的な想像を覆すことができる.つまり,サンプリングされた信号から,元の連続時間信号を完全に復元することができる.シャノンのサンプリング定理,あるいは標本化定理と呼ばれる有名な結果だ.
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(10.1) |
このとき,サンプリング周波数
が
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(10.2) |
つまり,元の信号の帯域の 2 倍を超える周波数でサンプリングしておけば,完全復元が可能ということだ.
元の連続時間信号を としよう.周波数領域で見ると
だ.
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(10.3) |
これをサンプリング周波数
,つまりサンプリング周期
でサンプリングして離散時間信号
を得たとしよう.
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(10.4) |
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(10.5) |
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(10.6) |
これからやるのは,端的に言うと,この
から
を完全に復元できるかという問題を考えようということだ.
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(4.3) |
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(10.8) |
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(10.9) |
ここで右辺にたたみこみと積の関係 (式(8.29)) を使うと,
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(10.10) |
ここまでの話をざっくりまとめると,サンプリングするということは,すなわち
をかけることに相当している.これを周波数領域で見ると,
のフーリエ変換をたたみこむことを意味する.
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(10.11) |
ちゃんと計算で示しておこうと思う.ただし,ちょっと技巧的になるけどな.まず,くし型関数
が周期
の周期関数であることに注意して,フーリエ級数展開しておく.
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(10.13) |
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(10.14) |
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(10.15) |
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(10.16) | |
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(10.17) | |
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(10.18) |
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(10.19) |
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(10.12) |
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(10.20) |
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(10.21) |
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(10.22) |
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(10.23) | |
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(10.24) | |
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(10.25) |
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(10.26) |
じゃあ,入力として
を入れた場合はどうなる?
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(10.27) |
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(10.21) |
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(10.28) |
このときのサンプリング後のスペクトル
はどんな形になる?
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(10.30) |
ちょっと面倒ではあるんだが,ゆっくり考えてみようか.式(10.29) を時間領域で考えると
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(10.31) |
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(10.32) |
つまり
を
だけシフトして
倍したものを全
について足し合わせたのが
だ.これもある種のたたみこみととらえればいいんだが,離散信号
と連続信号
の離散たたみこみになっているのがややこしいところだ.
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(10.33) |
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(10.34) | |
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(10.35) |
折り返しってのは今の 75 Hz で折り返す意味の折り返しかお.
レートも周波数も本質的には同じ概念を指す言葉だが,レートの方が使える文脈が限られているんだな.つまり「単位時間あたり何回サンプルできるか」という意味のサンプリング周波数の代わりに「サンプリングレート」という言葉を使うことはできるが,「信号が 100 Hz の周波数成分を含む」という代わりに「100 Hz のレート成分を含む」とはちょっと言い難い.ということを考えると,「ナイキストレート」という言葉は「サンプリングレートの下限」の方にしか使えなさそうってのはまあ納得のいくところだ.
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(10.36) |
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(10.37) |
だから
にしろ
にしろ,
のところでのみ値を持ってほかは 0,という表現を共通して選んでいるわけだ.サンプリングという操作の表現としてはまあ自然なものだろう.
これを周波数領域で見るとどうなる?
あるいは,フーリエ級数展開からスタートしてもいい.
swk(at)ic.is.tohoku.ac.jp