 の時間信号を周波数成分に分解するんだった.どんな周波数成分が出てくる?
 の時間信号を周波数成分に分解するんだった.どんな周波数成分が出てくる?
 で,その整数倍の周波数成分だけがでてくるんだったお.
 で,その整数倍の周波数成分だけがでてくるんだったお.
![\includegraphics[scale=0.5]{fig_ft/fs_periodic_1.eps}](img199.png) 
さて,ここで,元の 1 周期分の時間信号の波形をそのまま変えずに,周期だけを長くしたら,例えば周期を  にしてみたら,どうなる?
 にしてみたら,どうなる? 
![\includegraphics[scale=0.5]{fig_ft/periodic_2.eps}](img201.png) 
![\includegraphics[scale=0.5]{fig_ft/periodic_4.eps}](img202.png) 
 のときは,周波数領域では
 のときは,周波数領域では 
 おきに飛び飛びに値を持つんだったわけだろ.
 おきに飛び飛びに値を持つんだったわけだろ.
 になったらどうなる?
 になったらどうなる?
 倍だお.だから,基本角周波数は
 倍だお.だから,基本角周波数は 
 ,つまり
,つまり 
 になるはずだお.
 になるはずだお.
![\includegraphics[scale=0.5]{fig_ft/fs_periodic_2.eps}](img205.png) 
同じように,周期を  にしたらどうなる?
 にしたらどうなる?
 になるお.スペクトルの線の密度が4倍になるお.
 になるお.スペクトルの線の密度が4倍になるお.
![\includegraphics[scale=0.5]{fig_ft/fs_periodic_4.eps}](img208.png) 
 から
 から
 の連続時間上で定義された時間関数は,周波数領域で見ると,
 の連続時間上で定義された時間関数は,周波数領域で見ると,
 から
 から  の連続周波数上で定義されたスペクトルになる.ちょっと議論は乱暴だったけど,ああ何かそうなりそうだな,と納得してもらえればとりあえず OK としよう.
 の連続周波数上で定義されたスペクトルになる.ちょっと議論は乱暴だったけど,ああ何かそうなりそうだな,と納得してもらえればとりあえず OK としよう.
|  | (3.1) | 
 を整数
 を整数  について総和しているわけだ.これはいいな?
 について総和しているわけだ.これはいいな?
 をどんなに細かくしていっても,総和のままじゃダメなんだ.周波数が連続化されて,総和が積分になるように話を持っていきたい.
 をどんなに細かくしていっても,総和のままじゃダメなんだ.周波数が連続化されて,総和が積分になるように話を持っていきたい.
 を表していると思ってくれ.
 を表していると思ってくれ. じゃなくて,
 じゃなくて,
 をかけた後,でも総和を取る前のグラフだ.
 をかけた後,でも総和を取る前のグラフだ.
![\includegraphics[scale=0.5]{fig_ft/fs_line.eps}](img211.png) 
この線の長さを全部足すと  になる,ってのがフーリエ級数の意味するところだ.長さっていっても本当は複素数だという点には注意しなきゃいけないんだが,ともかくこうやって表そう.
 になる,ってのがフーリエ級数の意味するところだ.長さっていっても本当は複素数だという点には注意しなきゃいけないんだが,ともかくこうやって表そう.
![\includegraphics[scale=0.5]{fig_ft/fs_rectangle.eps}](img212.png) 
 の短冊みたいなのを考える.この短冊の面積が,元の線の長さ,つまり
 の短冊みたいなのを考える.この短冊の面積が,元の線の長さ,つまり 
 と等しくなるようにする.すると短冊の高さはどうなる?
 と等しくなるようにする.すると短冊の高さはどうなる?
 でいいのかお?
 でいいのかお?  で割っただけだお.
 で割っただけだお.
![\includegraphics[scale=0.5]{fig_ft/rectangle_size.eps}](img214.png) 
 になるようにできたわけだ.こうやって「総和を計算する問題」を「面積を計算する問題」に書き換えておいてから,分割をどんどん細かくしていけば,「面積を積分で求める問題」に持って行くことができる.
 になるようにできたわけだ.こうやって「総和を計算する問題」を「面積を計算する問題」に書き換えておいてから,分割をどんどん細かくしていけば,「面積を積分で求める問題」に持って行くことができる.
今の話を数式で書くとこうなる.まずフーリエ級数の式を,面積の総和だと思って書き換える.
|  |  | (3.2) | 
 をくくり出してくれ.
 をくくり出してくれ.
![$ \Omega[k] = \Omega_0 k$](img218.png) とする.基本角周波数の
 とする.基本角周波数の  倍の値を持つ角周波数だ.丸括弧じゃなくて角括弧なのは,括弧の中身が整数だということを強調しているつもりだ.
倍の値を持つ角周波数だ.丸括弧じゃなくて角括弧なのは,括弧の中身が整数だということを強調しているつもりだ.
|  | ![$\displaystyle = \frac{1}{2\pi}\sum_{k=-\infty}^{\infty} \Omega_0 \frac{2\pi F_k e^{j\Omega[k] t}}{\Omega_0}$](img219.png) | (3.4) | 
 によって変わる角周波数を表す変数だと考えるわけだお.
 によって変わる角周波数を表す変数だと考えるわけだお.
 の部分を
 の部分を 
![$ F(\Omega[k])$](img221.png) と書くことにする.
と書くことにする. の定数倍だから,周波数スペクトルを表す量になる.
 の定数倍だから,周波数スペクトルを表す量になる.
|  | ![$\displaystyle = \frac{1}{2\pi}\sum_{k=-\infty}^{\infty} \Omega_0 F(\Omega[k]) e^{j\Omega[k] t}$](img222.png) | (3.5) | 
 の中に
 の中に ![$ \Omega[k]$](img224.png) が出てくるのかお?
 が出てくるのかお? ![$ F[k]$](img225.png) じゃだめなのかお.
 じゃだめなのかお.
![$ F[k]$](img225.png) だと考える方が自然かもしれない.
 だと考える方が自然かもしれない. という整数に応じて値が決まるわけだからな.でも,後から積分に移行するときに備えてここは角周波数の単位を持つ量で書いておきたいんだ.つまり,
 という整数に応じて値が決まるわけだからな.でも,後から積分に移行するときに備えてここは角周波数の単位を持つ量で書いておきたいんだ.つまり,
 という整数に応じて
 という整数に応じて ![$ \Omega[k]$](img224.png) という角周波数が決まって,その角周波数のスペクトル成分
 という角周波数が決まって,その角周波数のスペクトル成分 
![$ F(\Omega[k])$](img221.png) が与えられると考えておく.
 が与えられると考えておく.
![$ F(\Omega[k])$](img221.png) の計算式も書き下しておこう.
 の計算式も書き下しておこう.
 を計算する式 (2.28) で,
 を計算する式 (2.28) で,
 を
 を ![$ \Omega[k]$](img224.png) と書いてやると,こうなる.
 と書いてやると,こうなる.
|  | ![$\displaystyle = \frac{1}{T_0} \int_{-T_0/2}^{T_0/2} f(t) e^{-j\Omega[k]t}dt$](img227.png) | (3.6) | 
![$ F(\Omega[k]) = 2\pi F_k / \Omega_0$](img228.png) に代入して
 に代入して
| ![$\displaystyle F(\Omega[k])$](img229.png) | ![$\displaystyle = \frac{2\pi}{T_0 \Omega_0} \int_{-T_0/2}^{T_0/2} f(t) e^{-j\Omega[k]t}dt$](img230.png) | (3.7) | 
| ![$\displaystyle = \int_{-T_0/2}^{T_0/2} f(t) e^{-j\Omega[k]t}dt$](img231.png) | (3.8) | 
 だから確かにそうなるお.
 だから確かにそうなるお.
![$ F(\Omega[k])$](img221.png) が
 が ![$ \Omega[k]$](img224.png) によって決まる量になっているのもわかるお.
 によって決まる量になっているのもわかるお.
 の式に戻って,これは単に変数名の置き換えだと思ってもらえばいいんだが,
 の式に戻って,これは単に変数名の置き換えだと思ってもらえばいいんだが,
 とする.
 とする.
|  | ![$\displaystyle = \frac{1}{2\pi}\sum_{k=-\infty}^{\infty} F(\Omega[k]) e^{j\Omega[k] t} \Delta\Omega$](img234.png) | (3.9) | 
 のままじゃダメなのかお?
 のままじゃダメなのかお?
 の極限を考えてやる.
 の極限を考えてやる.
![$ \Omega[k]$](img224.png) は実数
 は実数  に連続化されて,
 に連続化されて,
 は無限小になって
 は無限小になって  になる.
 になる.
で,途中で計算しておいた式 (3.8) の 
![$ F(\Omega[k])$](img221.png) の方も,同様に
 の方も,同様に
 の極限を考える.単純に積分の範囲が無限大に飛んでいくだけだな.これをフーリエ変換と呼ぶ.
 の極限を考える.単純に積分の範囲が無限大に飛んでいくだけだな.これをフーリエ変換と呼ぶ.
そしてさっきの式 (3.10) の方をフーリエ逆変換と呼ぶ.
フーリエ変換の計算式の右辺には時間変数  と周波数変数
 と周波数変数  が含まれているが,
 が含まれているが, で積分するから,
 で積分するから, だけが残る.連続時間上の関数から連続周波数上の関数への変換になるわけだ.フーリエ逆変換の方は,右辺を
 だけが残る.連続時間上の関数から連続周波数上の関数への変換になるわけだ.フーリエ逆変換の方は,右辺を  で積分しているから,
で積分しているから, だけが残るんだな.時間関数への変換になる.
 だけが残るんだな.時間関数への変換になる.
これに対して,周期的とは限らない一般の時間信号を表現しようと思うと.周波数としてはあらゆる実数を考えなくてはならなくなる.数式で表現すると複素指数関数の「総和」ではなくて「積分」で表現しなくてはならないわけだ.
ともかく,一般の時間信号は,あらゆる実数を周波数とする複素指数関数の重ね合わせで表すことができる,ということだ.これがフーリエ逆変換の意味だ.
 は一般に複素数になるから,振幅と位相を持っている.フーリエ係数
 は一般に複素数になるから,振幅と位相を持っている.フーリエ係数  と同様に,周波数
と同様に,周波数  の成分の振幅と初期位相を表しているわけだ.
 の成分の振幅と初期位相を表しているわけだ.
ついでに言うと,さっきの式 (3.3) のところで  をくくり出したのも,同じように単に慣例的なものなんだ.
 をくくり出したのも,同じように単に慣例的なものなんだ.
 をくくり出さなかったどうなるか,計算してみればわかるんだが,フーリエ変換の式の方の先頭に
 をくくり出さなかったどうなるか,計算してみればわかるんだが,フーリエ変換の式の方の先頭に  がついて,逆変換の式の方には何もつかなくなるんだ.だから,「フーリエ変換」の式をきれいに見せたかったら今回みたいに
 がついて,逆変換の式の方には何もつかなくなるんだ.だから,「フーリエ変換」の式をきれいに見せたかったら今回みたいに  でくくればいいし,「フーリエ逆変換」の式をきれいに見せたいならば,くくらずに導出したもので定義すればよかった.どっちにしろ,フーリエ変換して,またフーリエ逆変換すればちゃんと元に戻るからな.どっちでもよいんだけど,我々は前者を採用したってことだ.教科書によっては両方に
 でくくればいいし,「フーリエ逆変換」の式をきれいに見せたいならば,くくらずに導出したもので定義すればよかった.どっちにしろ,フーリエ変換して,またフーリエ逆変換すればちゃんと元に戻るからな.どっちでもよいんだけど,我々は前者を採用したってことだ.教科書によっては両方に 
 をつけているのもあるしな.
 をつけているのもあるしな.
 倍になってようがいまいが,その絶対的な数値自体は大した問題じゃない.長さをヤードで測るかメートルで測るか尺で測るかによって数値が変わるのと同じだ.ただし,どの定義で計算したものかはちゃんと把握しておかないとわけがわからなくなるので注意した方がいい.いろんな教科書の公式を混ぜて使うのは危険だ.
 倍になってようがいまいが,その絶対的な数値自体は大した問題じゃない.長さをヤードで測るかメートルで測るか尺で測るかによって数値が変わるのと同じだ.ただし,どの定義で計算したものかはちゃんと把握しておかないとわけがわからなくなるので注意した方がいい.いろんな教科書の公式を混ぜて使うのは危険だ.
というわけでまとめよう.ついでにいくつか記号や用語も導入しておこう.
 って書いてたと思うお.どうして大文字で書くんだお?
 って書いてたと思うお.どうして大文字で書くんだお?
離散時間信号について考えるとき,いわゆる普通の角周波数とは別に「正規化角周波数」という概念が出てくる.小文字の  はそっちの方で使おうと思うんだ.だからそれと区別するために,普通の角周波数は
 はそっちの方で使おうと思うんだ.だからそれと区別するために,普通の角周波数は  と書くことにする.ちょっと戸惑うかもしれないが,まあ我慢してくれ.
 と書くことにする.ちょっと戸惑うかもしれないが,まあ我慢してくれ.
そうそう,以下では  が
 が  のフーリエ変換であることをこんな風に表すことにする.これらは割と標準的な記法だ.
 のフーリエ変換であることをこんな風に表すことにする.これらは割と標準的な記法だ.
|  |  | (3.12) | 
|  |  | (3.13) | 
|  |  | (3.14) | 
| ![$\displaystyle {\cal F}[f(t)]$](img250.png) |  | (3.15) | 
| ![$\displaystyle {{\cal F}^{-1}}[F(\Omega)]$](img252.png) |  | (3.16) | 
 とする.
 とする.
|  | (3.17) | 
![\includegraphics[scale=0.5]{fig_ft/rectangular_func.eps}](img256.png) 
これをフーリエ変換するとどうなるか.
| ![$\displaystyle {\cal F}[r_{-a,a}(t)]$](img257.png) |  | (3.18) | 
|  | (3.19) | 
 の不定積分は
 の不定積分は 
 だから…
 だから…
 が出てくるので,
 が出てくるので,
 のときだけは別扱いしないとだめだな.
 のときだけは別扱いしないとだめだな.
 のとき,こうなるお.
 のとき,こうなるお.
| ![$\displaystyle {\cal F}[r_{-a,a}(t)]$](img257.png) | ![$\displaystyle = \left[ \frac{1}{-j\Omega} e^{-j\Omega t} \right]_{-a}^{a}$](img264.png) | (3.20) | 
|  | (3.21) | 
 だったことを使うんだ.
 だったことを使うんだ.
| ![$\displaystyle {\cal F}[r_{-a,a}(t)]$](img257.png) |  | (3.22) | 
|  | (3.23) | 
 の場合だ.
 の場合だ.
| ![$\displaystyle {\cal F}[r_{-a,a}(t)]\vert _{\Omega = 0}$](img269.png) |  | (3.24) | 
|  | (3.25) | |
|  | (3.26) | 
 は反比例のグラフだお.反比例と sin をかけたグラフだから,
 は反比例のグラフだお.反比例と sin をかけたグラフだから, が正のときは,sin なんだけど振幅が
 が正のときは,sin なんだけど振幅が  に反比例して減っていくようなグラフになるお.
 に反比例して減っていくようなグラフになるお. が負のときは…反比例の部分が負だから,sin 関数の正負がひっくり返ったものになって,その振幅はやっぱり
 が負のときは…反比例の部分が負だから,sin 関数の正負がひっくり返ったものになって,その振幅はやっぱり  の絶対値に反比例して減っていくわけだお.だから左右対称なグラフになりそうだお.よくわからないのは
 の絶対値に反比例して減っていくわけだお.だから左右対称なグラフになりそうだお.よくわからないのは
 の近辺だお.反比例は無限大に,sin はゼロに近づいていくから,かけ合わせた結果どうなるのか,すぐにはわからんお.
 の近辺だお.反比例は無限大に,sin はゼロに近づいていくから,かけ合わせた結果どうなるのか,すぐにはわからんお.
 のときの値が
 のときの値が  なのは計算の結果わかっていただろう.で,実はちゃんと連続につながったグラフになるんだ.
 なのは計算の結果わかっていただろう.で,実はちゃんと連続につながったグラフになるんだ. の場合をプロットしてみるとこうなる.
 の場合をプロットしてみるとこうなる.
![\includegraphics[scale=0.5]{fig_ft/sinc.eps}](img276.png) 
「振幅」スペクトルを考えるときは絶対値を表示するので,スペクトルの形状としてはこんな形になる.
![\includegraphics[scale=0.5]{fig_ft/abs_sinc.eps}](img277.png) 
 の場合は
の場合は
| ![$\displaystyle {\cal F}^{-1}[G_{-a,a}(\Omega)]$](img280.png) |  | (3.28) | 
|  | (3.29) | |
|  | (3.30) | |
|  | (3.31) | 
 の場合は
 の場合は
| ![$\displaystyle {\cal F}^{-1}[G_{-a,a}(\Omega)]\vert _{t=0}$](img285.png) |  | (3.32) | 
|  | (3.33) | 
 として,
 として, のときの値が 1 になるようにしたものを
 のときの値が 1 になるようにしたものを 
 とすることが多い.
 とすることが多い.
|  |  | (3.34) | 
|  |  | (3.35) | 
 は,
 は,
 で横軸と交わるだろ.
 で横軸と交わるだろ.
 で横軸と交わるようにしたものが便利な場合があるんだ.そうなるように
 で横軸と交わるようにしたものが便利な場合があるんだ.そうなるように  にして,ただし
 にして,ただし  のときの値はやっぱり 1 になるように調整した
 のときの値はやっぱり 1 になるように調整した
![\includegraphics[scale=0.5]{fig_ft/norm_sinc.eps}](img298.png) 
なので,単に sinc 関数と言われた場合は,実際にはどっちを指しているかちょっと注意が必要だ.
|  |  | (3.37) | 
 のところにインパルスが立っている場合だ.図で描くときにはこんな風に矢印にすることで,無限大だという雰囲気をかもし出す約束になっている.
 のところにインパルスが立っている場合だ.図で描くときにはこんな風に矢印にすることで,無限大だという雰囲気をかもし出す約束になっている.
![\includegraphics[scale=0.5]{fig_ft/delta_func.eps}](img301.png) 
ただし,こうやって書くだけではデルタ関数の性質をすべて伝え切れていない.この「無限大」のところがどんな無限大なのかが重要だ.具体的には,こういう性質を持つのがデルタ関数の「無限大」だ.
|  | (3.38) | 
 の全区間を積分しているが,
 の全区間を積分しているが,
 が 0 でない値を持つのは
 が 0 でない値を持つのは  を跨ぐ瞬間のみだということだ.だから,
 を跨ぐ瞬間のみだということだ.だから, を含むような積分範囲を取れば,積分値は必ず 1 になる.
 を含むような積分範囲を取れば,積分値は必ず 1 になる.
それが何を意味するかというと,デルタ関数は,高さは無限大だけど面積は有限で 1 だということだ.
 とか
 とか 
 とかがちゃんと意味を持っている.
 とかがちゃんと意味を持っている.
 とかけ合わせて積分すると
 とかけ合わせて積分すると
|  | (3.39) | 
![\includegraphics[scale=0.5]{fig_ft/delta_by_x.eps}](img306.png) 
 以外ではデルタ関数が 0 だから,
 以外ではデルタ関数が 0 だから, がどんな値を取ろうと積分には影響しなくて,
 がどんな値を取ろうと積分には影響しなくて, ではデルタ関数の
 ではデルタ関数の  倍になるから,結局面積は
 倍になるから,結局面積は  になる…という解釈でいいかお?
 になる…という解釈でいいかお?
 だけじゃなく他の時刻の値を切り出すこともできる.デルタ関数を
 だけじゃなく他の時刻の値を切り出すこともできる.デルタ関数を  だけシフトした
 だけシフトした 
 を使えばいい.
 を使えばいい. にインパルスが立っていることになる.これを他の有限値関数にかけて積分すると
 にインパルスが立っていることになる.これを他の有限値関数にかけて積分すると
|  | (3.40) | 
![\includegraphics[scale=0.5]{fig_ft/delta_T1_by_x.eps}](img310.png) 
 のときの瞬時値が取り出されるわけだお.
 のときの瞬時値が取り出されるわけだお.
 をフーリエ変換してみたらどうなる?
 をフーリエ変換してみたらどうなる?
| ![$\displaystyle {\cal F}[\delta(t)]$](img311.png) |  | (3.41) | 
 の値だけが切り出されて
 の値だけが切り出されて
| ![$\displaystyle {\cal F}[\delta(t)]$](img311.png) |  | (3.42) | 
|  | (3.43) | 
 の周波数スペクトルは定数 1 になる.これは何を意味する?
 の周波数スペクトルは定数 1 になる.これは何を意味する?
![\includegraphics[scale=0.5]{fig_ft/pair_delta.eps}](img315.png) 
 以外の時刻では全部ゼロになってしまうのかお.不思議だお.
以外の時刻では全部ゼロになってしまうのかお.不思議だお.
 にインパルスが立っているデルタ関数もフーリエ変換してみようか.
 にインパルスが立っているデルタ関数もフーリエ変換してみようか.
 を公式に入れればいいんだお.
 を公式に入れればいいんだお.
| ![$\displaystyle {\cal F}[\delta(t - t_1)]$](img316.png) |  | (3.44) | 
|  | (3.45) | 
 を
 を  の関数だとして見なきゃいけないんだお.結局,
 の関数だとして見なきゃいけないんだお.結局, と一緒に進んでいく螺旋になって,その螺旋の回転の速さが定数
 と一緒に進んでいく螺旋になって,その螺旋の回転の速さが定数  で表されているわけだお.
 で表されているわけだお.
![\includegraphics[scale=0.5]{fig_ft/pair_delta_shift.eps}](img319.png) 
 の解釈としてはその通りだな.時間領域で見てきた複素指数関数を,時間と周波数を入れ替えて考えればいい.さて,
 の解釈としてはその通りだな.時間領域で見てきた複素指数関数を,時間と周波数を入れ替えて考えればいい.さて,
 のスペクトルがこういう螺旋になるというのは,どう捉えればいいだろう?
 のスペクトルがこういう螺旋になるというのは,どう捉えればいいだろう?
 は
 は  に関わらず 1 だお.あ,そうか,だからあらゆる周波数が等しい振幅で含まれているっていう点では
 に関わらず 1 だお.あ,そうか,だからあらゆる周波数が等しい振幅で含まれているっていう点では  と同じなんだお.問題は位相だお.
と同じなんだお.問題は位相だお.
 だから,周波数
 だから,周波数  の成分は,
 の成分は,
 だけ位相が遅れていることになるお.これってどういうことだお….
 だけ位相が遅れていることになるお.これってどういうことだお….
 ってのは,
 ってのは, から時刻
 から時刻  だけシフトしているわけだろ.そういう関数を合成するには,各周波数のサイン波をどうすればいいと思う?
 だけシフトしているわけだろ.そういう関数を合成するには,各周波数のサイン波をどうすればいいと思う?
 ずつシフトしてやればいいはずだお.周波数
 ずつシフトしてやればいいはずだお.周波数
 のサイン波は 1 周期が
 のサイン波は 1 周期が 
 だから,位相で考えると,比例計算で
 だから,位相で考えると,比例計算で
![\includegraphics[scale=0.5]{fig_ft/time_shift.eps}](img326.png) 
 にあるデルタ関数も
 にあるデルタ関数も  にあるデルタ関数も同じだ.時間がシフトしている分は位相の違いになって現れるが,「同じ時刻」だけずらすために必要な「位相の量」は周波数によって違う.その結果として現れるのが
 にあるデルタ関数も同じだ.時間がシフトしている分は位相の違いになって現れるが,「同じ時刻」だけずらすために必要な「位相の量」は周波数によって違う.その結果として現れるのが 
 だ.
 だ.
 に
 に  を代入したら 1 になることも指摘しておこう.だから,デルタ関数
 を代入したら 1 になることも指摘しておこう.だから,デルタ関数 
 のフーリエ変換は
 のフーリエ変換は
 で,その
 で,その  の特殊例が 1 になっていると理解しておくのがよいと思う.
 の特殊例が 1 になっていると理解しておくのがよいと思う.
 をフーリエ逆変換するとデルタ関数が出てくるはずだお.計算してみるお!
 をフーリエ逆変換するとデルタ関数が出てくるはずだお.計算してみるお!
| ![$\displaystyle {\cal F}^{-1}[e^{-j\Omega t_1}]$](img328.png) |  | (3.47) | 
|  | (3.48) | |
| ![$\displaystyle = \frac{1}{2\pi} \frac{1}{j(t - t_1)} \left[ e^{j\Omega (t - t_1)} \right]_{-\infty}^{\infty}$](img331.png) | (3.49) | 
 で
 で 
 にしたときの値が定まらないお.
 にしたときの値が定まらないお.
sinc 関数をフーリエ逆変換するときのように「計算が難しい」のとはちょっと話が一味違う.
 をフーリエ変換したら
 をフーリエ変換したら 
 になると知っているんだから,
 になると知っているんだから,
 のフーリエ逆変換が
 のフーリエ逆変換が 
 になることもわかっていると考えてしまう.
 になることもわかっていると考えてしまう.
 とか,それを定数
 とか,それを定数  だけシフトした
 だけシフトした
 とかのフーリエ逆変換も計算しておこうか.やり方はほとんど同じだ.
 とかのフーリエ逆変換も計算しておこうか.やり方はほとんど同じだ.
| ![$\displaystyle {\cal F}^{-1}[\delta(\Omega - \Omega_1)]$](img337.png) |  | (3.50) | 
|  | (3.51) | 
 の場合は
 の場合は
| ![$\displaystyle {\cal F}^{-1}[\delta(\Omega)]$](img341.png) |  | (3.52) | 
 の振動は,
 の振動は,
 のところにインパルスが立つスペクトルになるわけだ.
 のところにインパルスが立つスペクトルになるわけだ.
![\includegraphics[scale=0.5]{fig_ft/pair_exp.eps}](img344.png) 
特に 
 の振動ってのは,つまり直流のことだから,
 の振動ってのは,つまり直流のことだから,
 のところにインパルスが立つことになる.
 のところにインパルスが立つことになる.
![\includegraphics[scale=0.5]{fig_ft/pair_unity.eps}](img345.png) 
 のフーリエ変換はどうなるか.
 のフーリエ変換はどうなるか.
|  |  | (3.53) | 
|  | (3.54) | 
 の関係を使って,
の関係を使って,
|  | (3.55) | |
|  |  | (3.56) | 
 と負の周波数
 と負の周波数  のところにインパルスが立ったスペクトルになるわけだ.
 のところにインパルスが立ったスペクトルになるわけだ.
![\includegraphics[scale=0.5]{fig_ft/pair_cos.eps}](img355.png) 
 とか
 とか 
 とかも周期的な信号なんだお.周期的な信号もフーリエ変換できるなら,フーリエ級数はもう要らないのかお?
 とかも周期的な信号なんだお.周期的な信号もフーリエ変換できるなら,フーリエ級数はもう要らないのかお?
いい質問だな.じゃあ,三角関数や複素指数関数に限らず一般論として,周期
 で周期的な信号
 で周期的な信号  をフーリエ変換したときにどうなるかを考えてみようか.
 をフーリエ変換したときにどうなるかを考えてみようか.
![\includegraphics[scale=0.5]{fig_ft/periodic_ft_again.eps}](img357.png) 
周期信号だから,フーリエ級数に展開できるわけだ.
|  |  | (3.57) | 
| ![$\displaystyle {\cal F}[f(t)]$](img250.png) | ![$\displaystyle = \sum_{k=-\infty}^{\infty} F_k {\cal F}[e^{j\Omega_0 k t}]$](img359.png) | (3.58) | 
|  | (3.59) | 
 の関係を使った.
 の関係を使った.
 だけシフトしたものを
 だけシフトしたものを  について足し合わせているので,
 について足し合わせているので, 間隔でデルタ関数がならんだような形になるわけだお.
 間隔でデルタ関数がならんだような形になるわけだお.
![\includegraphics[scale=0.5]{fig_ft/delta_train_F.eps}](img361.png) 
 の周波数成分がどんな風になっているかを考えると,まず,基本角周波数
 の周波数成分がどんな風になっているかを考えると,まず,基本角周波数  の整数倍以外の周波数成分がゼロになっているのは,まあ OK だろう?
 の整数倍以外の周波数成分がゼロになっているのは,まあ OK だろう?
 の整数倍以外の成分があったら元の信号の周期が
 の整数倍以外の成分があったら元の信号の周期が  になりそうもないお.
 になりそうもないお.
 の整数倍のところ,つまり
 の整数倍のところ,つまり 
 の場合だ.フーリエ変換の公式に
 の場合だ.フーリエ変換の公式に 
 を代入した場合を考えていることになる.
 を代入した場合を考えていることになる.
|  |  | (3.60) | 
|  |  | (3.61) | 
 倍をやめて,積分範囲が 1 周期分だったのを
 倍をやめて,積分範囲が 1 周期分だったのを  から
 から  までに変えたのがフーリエ変換になるお.
 までに変えたのがフーリエ変換になるお.
 を得ていたわけだ.フーリエ変換するときは,まず
 を得ていたわけだ.フーリエ変換するときは,まず  倍が必要だがそれはさておいても,この 1 周期分の積分を無限個足し合わせなきゃならない.
 倍が必要だがそれはさておいても,この 1 周期分の積分を無限個足し合わせなきゃならない.
 の整数倍のところでは,フーリエ変換の値は無限大に発散する.それが,周期関数のフーリエ変換がデルタ関数の並んだものになる理由だ.三角関数や複素指数関数をフーリエ変換したときにデルタ関数が出てくるのも,その特殊な場合になっているだけだな.
 の整数倍のところでは,フーリエ変換の値は無限大に発散する.それが,周期関数のフーリエ変換がデルタ関数の並んだものになる理由だ.三角関数や複素指数関数をフーリエ変換したときにデルタ関数が出てくるのも,その特殊な場合になっているだけだな.
 に比例した高さのデルタ関数が並ぶことになるってことでいいのかお?
に比例した高さのデルタ関数が並ぶことになるってことでいいのかお?
![\includegraphics[scale=0.5]{fig_ft/relation_fs_ft.eps}](img367.png) 
 じゃなくて
 じゃなくて 
 が並んだものになるのかお?
 が並んだものになるのかお?  はどこから来たんだお?
 はどこから来たんだお?
 を無理やりくくり出しただろう.その分の辻褄を合わせるために出てきたものだ.
 を無理やりくくり出しただろう.その分の辻褄を合わせるために出てきたものだ.
 で,それ以外が 0 になっているようなスペクトル
 で,それ以外が 0 になっているようなスペクトル  が与えられたとしよう.そのままフーリエ逆変換の公式に入れるとどうなる?
 が与えられたとしよう.そのままフーリエ逆変換の公式に入れるとどうなる?
 に
 に 
 をかけて積分するから…,ん? 積分っていっても飛び飛びにしか値がないんだお.こんなもの積分しても何も出てこないお.
 をかけて積分するから…,ん? 積分っていっても飛び飛びにしか値がないんだお.こんなもの積分しても何も出てこないお.
 に比例したデルタ関数を考えてやることにして「面積を持つ」ようにしてやるわけだ.そうすればフーリエ逆変換の公式で,うまく時間信号に戻るようになる.
 に比例したデルタ関数を考えてやることにして「面積を持つ」ようにしてやるわけだ.そうすればフーリエ逆変換の公式で,うまく時間信号に戻るようになる.
![\includegraphics[scale=0.5]{fig_ft/relation_fs_ft_inv.eps}](img371.png) 
座標軸上の飛び飛びの点でしか値をもたないような,つまり離散的な信号に対して,連続信号用の処理を適用したいときに,デルタ関数をかけておくことで各点の値に「面積」を持たせるという考え方だ.離散信号と連続信号が同じ密度を持つようにするためのトリックだと思ってもいい.
swk(at)ic.is.tohoku.ac.jp