そもそもアナログフィルタはどうやってできているのかを考えると,抵抗とかキャパシタとかを使った電子回路だったりするわけで,連続時間の線形時不変システムなわけだ.同じ役割をするものをコンピュータを使って作りたいわけだから,離散時間の線形時不変システムを考えようというのが自然な発想だ.
さて復習だ.周波数応答ってどういうことだった?
(8.21) |
論点としては,そうやって好き勝手に与えた周波数応答は本当に実現可能なのか,実現できるとしたらどうやって作ればいいのか,実現できないなら次善策はあるのか,とかを考えなくてはならないわけだな.
(12.1) |
じゃあ, のときに の値が 0 じゃないってのはどういうことになる?
ディジタルフィルタを分類して考える上では,この観点も重要だ.重要なので例によって名前がついている.インパルス応答 (のうち 0 でない部分) の長さが有限のものを FIR (Finite Impulse Response) フィルタと呼ぶ.
インパルス応答が時刻 まで続くとすると,出力は
一方,インパルス応答 (のうち 0 でない部分) が無限に続くものを IIR (Infinite Impulse Response) フィルタと呼ぶ.
それから,IIR フィルタの計算が無理ってのは,あくまで「たたみこみを直接計算するのは無理」って意味なので要注意だ.計算のしかたを工夫すると,無理じゃなくなる場合がある.それを次に見ていこう.
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ただし,それでもあらゆる線形時不変システムが表現可能になったわけじゃないことに注意して欲しい.線形時不変システム全体のうち,現実に計算しやすいものとして式(12.15) のような線形差分方程式で表されるもののみを考えようということだ.その範囲内で,所望のディジタルフィルタとして機能するものを模索していくことになる.
まとめよう.
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