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ロックオントラッキング顕微鏡  

本研究室では,顕微鏡下で高速に運動する対象(ターゲット)を追跡し,顕微鏡の視野内に留め続けることのできるロックオントラッキング顕微鏡を開発しています.現在の主なターゲットは主に動く生物や細胞です.

顕微鏡に取り付けたカメラで取得した画像からターゲットの重心位置を計算し,重心が画像中心に近づくように顕微鏡のステージを制御します.顕微鏡を用いた観察では,ターゲットにピントを合わせることが非常に重要です.焦点方向にステージを制御してターゲットに自動的にピントを合わせる技術(オートフォーカス)の研究にも取り組んでいます.

観察したいターゲットを視野の外に逃がすことなく自動的に追いかける,まさに顕微鏡ロボットです.

lock-on microscope
図1: ロックオントラッキング顕微鏡.

図2: (左)アリのロックオントラッキング結果.白枠はターゲットとした領域を示す.(右)顕微鏡ステージの XYZ 方向への制御.左下はステージ制御中にカメラで取得した顕微鏡画像である.

図3: ゼブラフィッシュのロックオントラッキング結果.

適用例: 線虫 C. elegans

動物は環境からの様々な刺激を受容し,脳・神経系における刺激の情報処理(神経活動)結果に基づいて行動を変化させます.「神経活動」と「行動」は密接に関係しており,動物の神経機能の動作機構を解明する上で両者を同時に観察することが必要です.

「神経活動」と「行動」を同時に観察するためのモデル生物として,線虫 C. elegans が広く利用されています.ヒトと比べて非常に簡単な神経回路を有していることや,生活環が 3 日程度と短く飼育がしやすいこと,体が透明で体外から神経活動の観察がしやすいことなどが線虫を利用する主なメリットです.

しかし,運動する線虫が視野外に出てしまい神経活動の観察が中断してしまうという問題があります.この問題の解決方法として,

  1. 対物レンズの倍率を下げ視野を広げる
  2. 機械的または化学的に線虫の体を固定する

という方法が取られてきました.しかし上記の方法では「神経活動」と「行動」の両者を同時に観察することはできません.

そこで,ロックオントラッキング顕微鏡を適用します.線虫の体の模様をターゲットとして,神経細胞がまとまって存在する頭部付近をトラッキングします.線虫の「行動」を追跡しながら,「神経活動」を記録するため,神経細胞の蛍光観察を行います.神経細胞内に神経活動と相関のある蛍光タンパク質をあらかじめ発現させた線虫を用いています.ロックオントラッキング顕微鏡の利用によって,線虫の「神経活動」と「行動」を同時に記録することに成功しました.

lock-on microscope
図3: ロックオントラッキング顕微鏡.

図4: 線虫 C. elegans のロックオントラッキング結果.白枠はターゲットとした線虫の頭部領域を示す.

関連文献 - Mitsunori Maru, Yasunobu Igarashi, Shogo Arai, and Koichi Hashimoto: "Fluorescent Microscope System to Track a Particular Region of C. elegans", IEEE/SICE International Symposium on System Integration, 2010. (査読有り) - 特願2007-125077, 発明者 小原 健, 五十嵐 康伸, 橋本 浩一: 発明の名称 "顕微鏡装置", 出願人 独立行政法人 科学技術振興機構, 出願日 2007. 5. 9

細胞の自動認識技術の開発

細胞の自動認識で重要な性能は以下の3つである。]光やアンプノイズに対するロバスト性。追跡対象以外の細胞が視野に入ったり(侵入問題)、追跡対象の細胞と接触したりしても(接触問題)、同一の細胞のみを認識し続けるロバスト性。F阿細胞を見失わないための高速性。

そこで我々は、以上の3性能を同時に向上する画像処理技術を発明した。_菫全体に対して評価関数を定義するRegion-Based (RB) LSMを定式化し、局所的なノイズにロバストにした。LSMは評価関数最小化の戦略で輪郭を初期値から更新し、対象を認識する画像処理である。認識した細胞の光量がある一定値に近づくと評価関数が小さくなるBrightness-Limited (BL) LSMを定式化し、侵入問題と接触問題にロバストにした。一定値には、予め測定した光量の集団平均値を用いた。上記2つのLSMを組み合わせたRB+BL LSMを並列(SIMD型プロセッサ)・高速(撮影速度1kHz)ビジョンシステムに実装することで、128×128画素8bitの白黒画像に対して、画像取得から輪郭認識迄を、細胞を見失わないmsオーダー(3ms以内、333Hz以上)で行えた。

fei-1.png
図5:ゾウリムシの追跡結果。白枠は、レベルセット法で認識した細胞の輪郭を示す。

関連文献 - X. Fei, Y. Igarashi, and K. Hashimoto:"2D tracking of a single paramecium by using a parallel level set and a visual servoing" IEEE/ASME International Conference on Advanced Intelligent Mechatronics (AIM2008), pp. 27-32, 2008. (査読有り)


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